そして、運命の判決は下される。
アンジェとの会話から二週間後の期末考査の最終日、あたしは理事長のお呼びだしを食らった。
いつものチャイムとは違う、ブザーのような音が全校舎内のスピーカーから響き渡り、あたしの胸のブローチが赤い光を放ち始める。すると担任が静かにあたしの名を呼び、頑張ってねと棒読みで告げてあたしを教室から追い出した。
あたしは、ゆっくりと理事長室へと歩き始める。
箒で飛べば一瞬だ。でも、あたしはそうしなかった。そうしないとみんなの注目の的だと分かっていながら。
後輩は何事かと耳打ちし合い、
同輩は哀れむような視線を向け、
先輩はまたかと言ったような顔であざ笑っている。
私はといえば、なにも考えずにひたすら理事長室を目指し続けていた。
やがて、スターライン魔女学校最上階である82階の理事長室の前へたどり着いた。重々しい赤色の扉が、眼前にそびえ立っている。その両脇には、あたしの脚の長さくらいの大きさの巨大な蝋燭が百本ずつ。
足を踏み入れてはいけないような荘厳とした雰囲気に押され、中にはいるのを躊躇っていると、
「入りなさい」
低いしわがれた老婆の声がして、ゆっくりと扉が開かれた。
「失礼します」
一歩足を踏み入れると、顎の前で手を組みいすに堂々と座っている理事長らしき人物と、そのそばに控える秘書らしき二人の女性のシルエットが見えた。
逆光で、顔はよく見えない。
「何故、呼び出されたか分かりますか」
理事長がゆっくりと、あたしに尋ねた。
「成績、ですよね」
「えぇ、そうです」
理事長はため息を一つ、
「あなた、本当にやる気ある?」
顔が見えなくてもあたしをじっと見ていることは分かる。その鋭い眼光に、心の奥を見抜かれている気がしてならなかった。
実際、すごい魔女の中には相手の目を見るだけで人の心が読める人、いるし。というか、あたしのママがそうだった。理事長はどうだろう、やっぱりスターライン魔女学校の最高責任者だからなあ。
とにかく、嘘は言えないな、と思う。
だからあたしは少し考えて、
「全くありません」
そう、口にした。
――そして翌日、三カ年の人間界での修業があたしに言い渡されたのであった。